「はぁ・・・あいつらマジめんどい、またビンぶつけられたし」

「さすがに最近調子のりすぎなとこあるわ」

「確かに火炙りはやりすぎ感あるよねぇ」

「あれ別に大丈夫だけど、言っても結構熱いからね」

「こりゃ引っ越すかなぁ・・・」

「いいかもね・・・でもどこに?」

「うーん、ピンと来ないね。」

「だよねぇ。じゃあさ、新しく創るってのはどうよ?」

「創るって何を?」

「世界を」

「・・・」

そうして魔法界が出来てから数百年が経った後

フランシスカ=アックス、エリザベート=ジャスティス、アイリーン=クレイグ、レイチェル=ノーマン

後の世で、「はじまりのバリスタ」と呼ばれることになる彼女たち4人の手によって魔法コーヒーは生まれた

魔法コーヒーは魔法薬とコーヒーを特殊な方法で調合することで生まれる

コーヒーの持つ覚醒作用、それは本来、単にコーヒーを飲むと目が覚めるということを意味することが多い

しかし、魔法薬とコーヒーを正しく調合することでそれは単に目が覚めるというだけのものではなくなる

そう、魔法使い族が自身の体に帯びている魔力を覚醒させるのだ

本来であれば、生まれながらに高い魔力を有しているエルフ族しかたどりつけない境地まで

時は人間界でいう西暦2017年、はじまりのバリスタたちによって魔法コーヒーが発明されてからさらに数百年が経った現在では、魔法界はだいぶ様変わりした

一時的にではあるが、通常、魔法使い族がたどりつけないレベルまで魔力を高めることを可能とする魔法コーヒーの技術は、魔法界全体に熱狂も混乱ももたらした

そのため、現在、魔法コーヒーの扱いは政府の管理下におかれ、一部の者たちのみ、その使用を許されている

魔法コーヒーを取り扱うことを認められた者、バリスタ

そして、バリスタの教育・所属機関であるモカデミア

現在、魔法界には全部で4つのモカデミアが存在する

西のウエストフォード学院
南のサウラノ共立アカデミー
東のイーストンカレッジ
北のノアトン工房

ここはウエストフォード学院

ウエストアイランド中央部に位置するウエストフォードの街にあり、はじまりのバリスタのうち、フランシスカ、エリザベート、アイリーンの3人によって創立された、2番目に歴史の長いモカデミア

今日もバリスタたちが魔法界一のバリスタを目指し切磋琢磨する

バリスタの優劣は、自ら淹れた魔法コーヒーの優劣によって決まる

そして、魔法コーヒーの優劣は、魔力覚醒の程度で決まる

では、魔力覚醒の程度の優劣は、どのように決まるのだろうか?
審査員が飲む?

いやいや、そんな方法ではわからない

ならどうやって?

戦えばいい・・・

自分の作った魔法コーヒーを飲んだバリスタ同士で・・・

そう、「魔法珈琲専門学校モカデミア」は魔法界一のバリスタを目指し、日々おのれのコーヒーの優劣を、自らの拳で語る者たちの物語である